健康診査での採血異常で有所見率は約50%程度で、その中で一番多いのは脂質異常症(コレステロール)で
約30%です。その次に多いのが、「肝障害(約20%)」です。また健診で腹部超音波検査では男性で30%、
女性で15%の人が、脂肪肝と言われています。
脂肪肝は指摘された段階で早期に治療しないと、その後肝硬変や肝臓がんを発症する可能性が高まります。
また、そのほか生活習慣病と言われる肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症、痛風なども併発することもあります。
経験上にはなりますが、脂質異常症・糖尿病・高血圧といった病気の前段階に『肝機能障害を伴う脂肪肝』があり、それを軽視することで前述の病気を併発し内服する薬が少しずつ増えていくのではないでしょうか。しっかりと治療することをお勧めいたします。
脂肪肝ってメタボの前段階なの?
私たちの生涯の医療費は?
生涯医療費は平均2400万円と言われています。相当な支出を必要とします。ですので、気付いた今からあなたの中の『健康』の優先順位を上げていただくことで、ご自身の医療費を抑える事ができます。
脂肪肝の診断は?
脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰に蓄積し"フォアグラ"のような状態をいいます。
肝臓の組織所見では、肝細胞の30%以上に脂肪滴(中性脂肪)が認められると診断に至ります。
脂肪肝ってどんな種類があるの?
脂肪肝;『アルコール性』と『非アルコール性』に分けられる。
「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」は「非アルコール性脂肪肝(NAFL=単純性脂肪肝)」と
「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に分かれます。NAFLD患者様のおおよそ8割が単純性脂肪肝、
2割がNASHと考えられています。
脂肪肝の原因は何?
肥満、糖尿病、アルコール、脂質異常症などがあります。肥満が一番の原因です。
男性の場合、肥満でない人に比べ約5倍脂肪肝になるリスクが増えてしまいます。
女性では約9倍もリスクが増えます。
脂肪肝は放置するとどうなるの?
脂肪肝は放置しておくと次のような病気を誘発させます。
脳梗塞、心筋梗塞、高血圧、糖尿病、脂質異常症、痛風、胆石症、睡眠時無呼吸症候群、動脈硬化、
関節痛など
症状ってあるの?
症状は特にありません。
しかし、放置してしまうと、肝硬変になり黄疸やむくみ、腹水が貯まるなどの症状が出てきます。
また、肝細胞癌も出現してくることがあります。
どんな風に診断はつくの?
血液検査
AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPが高値になる。
(健診で肝機能障害でひっかかり、来院する方が多いです)
画像
腹部超音波検査で「肝腎コントラスト上昇」を認める。
これは肝臓と腎臓の色合いが違うことで診断します。
(肝臓の方が腎臓より白い。ふつうは同じ色合い)
検診USで脂肪肝、そして採血で肝障害があると、治療の必要性がでてきます。逆に脂肪肝があり肝障害がない場合は、体重管理が必要です。
病理検査
肝臓の組織所見では、肝細胞の30%以上に脂肪滴(中性脂肪)が認められると診断に至ります。
治療法はあるの?
基本的に脂肪肝に対しての治療薬はありません。治療の基本は食事・運動療法となります。
データ上では7%以上の体重減少により肝臓の炎症が改善すると言われています。さらに10%以上になると脂肪肝による慢性化(線維化)が改善するとも言われています。
以下に、それぞれの治療を示します。
薬物治療、外科治療
まず、脂肪肝に対しての保険適応のある治療適応はありません。
基本的には生活習慣の改善が必要です(後述)
現在は病態に応じて下記のような治療が行われることがあります。
(保険適応でない場合もありますので注意が必要です)
・抗酸化剤;ビタミンE
・糖尿病治療薬
・脂質異常症治療薬
・肝庇護剤
・減量手術;高度肥満例に有用
※そのほか現在、様々な薬剤を治験中ですが、保険適応のある薬剤はまだ出ておりません。
食事
アルコール性脂肪肝の方は、アルコール節酒が必要で、休肝日も2日は取ったほうが良いでしょう。
肥満が原因の方は、まずは間食を取らず、規則正しく3度の食事をバランスよくとることをお勧めします。
飲み物もジュースやコーラなどは我慢し、無糖のお茶や水などにしましょう。また、仕事で帰りが遅い方は、
帰宅後入浴し食事をして、すぐに就寝すると思います。そうすると食事が脂肪になって肝臓に貯まりやすく
なりますので、就寝の2時間前までには食事をすませておきましょう。
運動
脂肪肝の場合は、有酸素運動が、効果が高いと考えます。例をあげれば、ウォーキング(早歩き)や ジョギング、サイクリング、水泳などある一定時間継続する運動です。運動継続時間として、1日30分の 早歩きがおすすめです。肝臓の脂肪は、運動してから10分を経過して燃焼し始めるので、きちんと効果を 得るためにも、途中でやめないで30分以上続けるようにしましょう。
脂肪肝は治療しないと本当に
肝硬変や肝臓がんができるの?
国民の約30%がNAFLD/NAFL/NASHに罹患していると言われています。ではこれらの脂肪肝を治療しない
とどうなるのでしょうか。
NAFLDにおける全死亡率は15人/1000人・年と言われています。また、心血管イベントはNAFLDで1.64倍の
リスクが増加すると考えられています。さらに進行すると、NASHという慢性肝炎になります。こちらの全
死亡率は25人/1000人・年と言われています。
これらを、しっかり治療をしないと、脂肪肝は、NAFLからNASHへ進行していきます。NASHの50%が進行
性で、約10年で20〜30%が肝硬変、肝がんに進行します。ある研究での10年生存率について、軽度の慢性化
した状態では94%、肝硬変状態だと17%と、肝繊維化進行例で予後が悪いとなっております。また、慢性肝
炎からの「発がん」も約20%と言われています。なかでも糖尿病を合併している患者様に関しては、肝がん
リスクは健常者の2.5倍と言われています。
どのようにフォローしてくれるの?
非アルコール性脂肪肝で肝機能障害のある患者様は、まず3〜6か月の定期的な採血と年1回の画像検査 (腹部超音波検査もしくは腹部CT)をしていきます。その間に体重管理や食事運動療法の指示をしていきます。 NASHの患者様は、肝繊維化(硬さ)の状態にもよりますが、年2回の肝癌スクリーニングが推奨されています。 もちろん、体重管理や食事運動療法の指示も同様にしていきます。