関節リウマチは、免疫異常によって関節の炎症を起こし、主に手足の関節に痛みや腫れが現れる病気です。進行すると、軟骨や骨が破壊されていくため、関節の変形・関節の可動制限などが起こり、日常生活に支障を来すようになります。
しかし、早期に発見して、早期から適切な治療を開始すれば、多くの方で関節リウマチの症状をコントロールして、関節破壊の進行を最小限に食い止められることができます。
関節リウマチとは?
関節リウマチは「自己免疫疾患」のひとつです。
本来、自分の体を守るためにある「免疫」が何らかの理由で正常な細胞・組織を攻撃することにより、関節が炎症して、痛みや腫れが引き起こされます。
関節リウマチのセルフチェック
最近、こんな症状はありませんか?
もし1つでも当てはまる場合には、関節リウマチの疑いがありますので、一度ご受診されることをおすすめします。
- 朝起きると、手がこわばる、手が動かしにくいなど動作に違和感がある
- 関節が腫れて、痛い
- 関節が変形している
- 関節が熱っぽい
- 目や口が渇きやすい
- 食欲不振・疲れやすい
- 寒さで指先が白色や紫色に変色することがある
- 呼吸が苦しいときがある(咳・息切れ)
- 採血をしたら、リウマチ因子が陽性だった
- 家族にリウマチ患者がいる
関節リウマチになりやすい人
厚生労働省の患者調査*1では、関節リウマチの患者数は約33万人と推計されていますが、症状があっても病院に通っていない方を含めると、全人口の0.5%~1%程度の約70万~100万人にも上ると推察されています。
*1(参考)平成29年患者調患者調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html
患者さんの男女比を見てみると、女性の発症は男性の約4倍ですが、男性の発症もあります。30代~50代に発症のピークがある一方で、最近は60代以降での発症も増えています。
また、家族に関節リウマチ患者さんがいる方、喫煙されている方では発症リスクが高くなるという報告があります。
関節リウマチのメカニズム
関節リウマチによる関節の炎症は、関節を内側からくるむ「滑膜組織」から始まります。炎症が進行すると、滑膜組織から炎症を起こす物質「炎症性サイトカイン」などが生み出されるようになり、症状が悪化していきます。
(図)正常な関節と関節リウマチの関節の比較
関節リウマチの症状
他の関節の病気とは異なり、関節リウマチでは「関節を動かさなくても痛む」のがポイントです。関節リウマチによる関節炎が進行すると、関節の軟骨や骨の破壊がみられ、変形していきます。
関節リウマチの初期症状
- 朝のこわばり
朝起きてすぐに、手を開きにくかったり、手が動かしづらかったりします。食事の用意や着替えなどの際、手に違和感があります。症状は起きてから30分程度でなくなります。 - 関節の痛み・腫れ
手指の関節が痛い、腫れている、熱っぽい感じがします。 - 微熱・倦怠感・食欲不振
37℃台の微熱、だるい感じ(倦怠感)、食欲不振などの全身症状が現れることもあります。
症状が現れやすい部位
症状が現れやすい部位は、手足の指(第二関節)や手首です。左右の関節で同時に症状が現れやすいといった特徴があります。ただし、片側だけ、少数の関節、肘・肩・膝・足首など他の関節に現れるケースもあります。手指の第一関節に症状がみられるのは稀です。
関節リウマチの合併症
関節の炎症は皮膚・目・肺など全身に広がることがあります。
気を付けたい合併症には、貧血、骨粗しょう症、関節性肺炎、皮下結節、胸膜炎、心膜炎、血管炎、動脈硬化などがあります。また、関節リウマチ患者さんの約20%に目や口の乾燥を伴い、難病指定されている「シェーグレン症候群」の合併がみられます。
関節リウマチの原因
関節リウマチの発症原因は明確になっていませんが、「免疫異常」によるものと考えられています。免疫異常が起こる要因には「遺伝要因」と「環境要因」があり、それぞれが複雑に関係して発症しているとされます。
遺伝要因
関節リウマチの発症に関与するとされる遺伝子は、これまでに数十個発見されていますが、遺伝子があるだけでは発症しません。
スウェーデンでの研究によると、親や兄弟姉妹に関節リウマチ患者さんがいる人は、そうでない人と比べて、発症リスクは約3~4倍高まると報告されています。
環境要因
喫煙、ウイルス・細菌感染、過労・ストレス、出産、手術などが発症に関与すると考えられています。また、遺伝要因と比べて、環境要因の方が発症に大きく影響すると考えられています。
関節リウマチの検査・診断
最近の研究では、関節リウマチによる関節破壊は発症早期から進行することが分かりました。早めの検査・診断が、関節の変形予防や症状のコントロールに重要となります。
関節リウマチの検査
- 血液検査
関節リウマチの活動性や炎症程度を調べます。関節リウマチ患者さんでは、細胞・組織に対する抗体「リウマトイド因子」が陽性となるケースが多いですが、患者さんの約25%は陰性となるため、 「リウマトイド因子の陽性=関節リウマチ」ではありません。 - 画像検査
X線検査(レントゲン検査)でリウマチによる関節症状の進行度を調べます。
また、関節超音波検査では、関節リウマチの初期段階から現れる「滑膜炎(関節内の滑膜の炎症)」の有無を調べられるため、早期診断や治療効果の判定に役立ちます。
※当院では関節超音波検査は行っておりません。担当医が必要と判断した場合は検査が可能な施設に紹介致します。
そのほか、関節リウマチが長く続くと、腎機能が悪くなって尿タンパクが出ることがあります。合併症の発症チェックなど、必要に応じて「尿検査」を行います。
関節リウマチの診断
近年は早期診断を目指し、アメリカリウマチ学会(ACR)/ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の分類基準が用いられるようになっています。
当院もガイドラインに則り、症状や血液検査・X線検査などの結果を基に総合的に診断しています。
関節リウマチの治療
現在の関節リウマチの治療は、効果の高い新しい治療薬が開発されたことにより「薬物療法」を中心に行われています。
治療の目標
関節リウマチの治療では、次のような3つの寛解を維持することを目標としています。
- 関節の炎症を抑えて、痛み・腫れを抑える「臨床的寛解」
- 関節破壊の進行を抑える「構造的寛解」
- 身体機能を保って、生活の質を改善する「機能的寛解」
(図)関節リウマチの治療目標
薬物治療
「抗リウマチ薬」を中心として、様々な種類のお薬を併用して、関節破壊の進行を遅らせます。
- 抗リウマチ薬
リウマチ治療の中心となるお薬で、免疫異常の調節や抑制に作用します。ただし、肝障害・間質性肺炎などの副作用が起こるケースもあるので、定期的な検査を受けながらの服用が大切です。 - 非ステロイド性抗炎症薬
痛みに関連する物質を防いで、リウマチの痛みや炎症を軽くする作用があります。 - 副腎皮質ステロイド
主に薬物療法の開始時に抗リウマチ薬の補助として併用することがあります。即効性がありますが、長期使用では生理不順・多汗・不眠のほか、骨粗しょう症・糖尿病などの重い合併症が現れることもあるため、一般的に抗リウマチ薬が効き始めたら、減薬・中止します。 - 生物学的製剤(バイオ医薬品)
新しいお薬で、症状の悪化に関与する「炎症性サイトカイン*2」の働きを抑制して、炎症を抑え、軟骨や骨の破壊が進むのを大きく妨げる作用があります。主に抗リウマチ薬の効果が不十分なときに使用します。また、感染症などの副作用、高価なお薬といったデメリットもあります。
*2炎症性サイトカイン:炎症を起こす物質のことで、インターロイキン1 ( IL-1 ) 、インターロイキン6 ( IL-6 )などが有名。 - JAK阻害薬
新しいお薬で、炎症性サイトカインの伝達に必要な酵素(JAK)を阻害して、関節リウマチの進行を防ぐ作用があります。生物学的製剤と同じように、抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に使用します。免疫機能を下げる働きがあるので、帯状疱疹、上気道感染、肺炎などの感染症にかかりやすくなる副作用があります。
リハビリテーション
リハビリテーションとは、運動療法や理学療法(電気刺激・マッサージ・温熱などの物理的手段を行う)、作業療法(日常生活動作・作業を行う)、補助具を使った治療のことで、体の機能回復を目指します。
手の握り開き(手をグーパーする)、指の開き寄せ(指を開いて、くっつける)、手首や足の上げ下げなど、関節を毎日少しずつ動かすことで、関節の固まりを防ぎます。
手術療法
薬物療法を行っても十分な効果が得られない場合には、外科的手術を検討します。
破壊された関節を人工の関節に入れ替えて、関節の働きを戻す「人工関節置換術 ( じんこうかんせつちかんじゅつ )」、首の骨(頸椎:けいつい)に変形が起こり、手足の痺れ・麻痺がみられるときには頸椎を固定するための「関節固定術」などの手術をします。
※手術が必要な場合には、さいたま赤十字病院など基幹病院をご紹介します。
よくあるご質問
「手指の第一関節が痛い」「足の親指だけが腫れて痛い」のですが、関節リウマチなのでしょうか?
どちらも関節リウマチではなく、関節リウマチに似た別の病気の可能性があります。
指先の第一関節の痛み・腫れは、「変形性関節症」でよくみられます。稀に第一関節に症状が現れることがありますが、その場合には第二関節にも炎症が起こります。
また、男性で「足の親指の腫れ・痛み」が現れる病気に「痛風(つうふう)」があります。
痛風では、ほかの関節に炎症は起こらないため、リウマチとは異なります。
関節リウマチと似たような症状の病気はたくさんあります。しっかり鑑別するために、当院では詳しい検査と丁寧な診察を行っています。
まとめ
一昔前まで、関節リウマチは「治らない病気」であり、「最終的に関節が動かなくなり、一生痛みと付き合わなければならない」と思われていました。
しかし、昔と比べて、関節リウマチの診断・治療は大きく進歩しています。
新しい診断基準に変わり、早期に発見がしやすくなり、新薬の開発により関節破壊の進行を抑え、「寛解」を目指し維持できる病気に変わっています。
関節リウマチは早期発見・早期治療が大切な病気です。
関節の痛み・腫れ・朝のこわばりなど、気になることがありましたら、一度お気軽にご来院ください。
記事執筆者
しおや消化器内科クリニック
院長 塩屋 雄史
職歴・現職
獨協医科大学病院 消化器内科入局
佐野市民病院 内科 医師
獨協医科大学 消化器内科 助手
佐野医師会病院 消化器内科 内科医長
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 医師
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 副部長
しおや消化器内科クリニック 開業(平成26年)
専門医 資格
日本内科学会認定内科医
日本肝臓学会認定肝臓専門医
日本医師会認定産業医