痛風発作後、半年~2年程度で再発する方が多いです。痛みが治まっても、継続的に尿酸値を下げて、お薬で尿酸塩の結晶を溶かしきらない限り、再発する可能性があります。痛みが治まったからと安心せず、その後も継続して内服を続けることが大切です。
「痛風」とは生活習慣病のひとつで、老廃物である尿酸が体内に増えすぎて結晶化したもの(尿酸塩結晶)が、関節に沈着し剥がれ落ちることで関節炎を引き起こします。
関節炎は主に足の親指の付け根・足首の関節に起こりやすく、「風が吹いても痛い」と表現されるような激しい痛み・腫れなどの症状が突然現れます(痛風発作)。
発症の背景には尿酸値の高い状態「高尿酸血症」がありますが、高尿酸血症でも特に症状は現れないので、健康診断・人間ドックなどの血液検査で初めて尿酸値が高いことに気づかれる方がほとんどです。また、尿酸値が高くなる要因には生活習慣の乱れ、肥満といったメタボリックシンドロームの影響もあり、痛風患者さんの約95%は30代以降の中高年男性です。
痛風による痛みのピークは発作24時間後で、1週間も経てば痛みが引いていきます。しかし、関節に尿酸塩が付いている限り、痛風発作の再発や腎臓機能の低下、動脈硬化による脳出血・脳梗塞などの脳血管障害、心筋梗塞などの虚血性心疾患、尿路結石といった合併症を引き起こしやすくなるため、「尿酸値を適切にコントロールすること」が大切です。
健康診断・人間ドックで尿酸値異常を指摘された、痛風のご家族がいるなど尿酸値・痛風に関して心配事がある方、痛風発作で痛みがある方は、当院までお気軽にご相談ください。
痛風という病名は、「風が当たっただけでも痛いこと」「風のように痛みに強弱があること」から名づけられたとされています。(※諸説あり)
厚生労働省によると、日本の痛風患者数は推定約125万人と報告*1されており、この30年間で患者数は約4倍に増加しています。さらに、痛風の前段階である「高尿酸血症」も約1,100万人超だと推定され、増加傾向にあります。
*1(参考)2019年国民生活基礎調査 令和元年国民生活基礎調査 健康 全国編 103|厚生労働省
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003442378
また、痛風患者さんの約95%以上は男性です。これ程までに男女差がある理由には、女性ホルモン(エストロゲン)に尿酸の排泄を促す働きがあるためと考えられています。患者数のピークは60代ですが、初めて発症した年代を見てみると、30代・40代の方が多いです。
さらに、30代40代の男性の約3割は、高尿酸血症であるとする調査結果もあります。
(グラフ) 国民生活基礎調査 令和元年国民生活基礎調査 健康 全国編|厚生労働省
※政府統計の総合窓口(e-Stat)を基に凡例位置を修正
次の項目に当てはまる数が多い程、高尿酸血症や痛風になりやすいタイプなので、注意が必要です。なお、突然の足の痛み(特に親指付け根)や腫れなど自覚症状がある場合には、すみやかにご来院ください。
また、痛風が発症しやすいタイミングとして、発汗などで体内の水分が失われやすい「夏」、アルコールを飲んだ後、就寝時に脱水症状が起こりやすい「夜中~明け方」が挙げられます。
痛風の発症原因の根底には、血中尿酸値の高い状態(高尿酸血症)が続いていることがあります。高尿酸血症があるからと言って、必ずしも痛風を発症するとは限りません。しかし、高尿酸血症に加え、体質(遺伝素因)、高血圧、過剰なアルコール摂取習慣・過食・肥満などの生活習慣の乱れがある、30代以上の男性といった危険因子がある場合には、発症しやすくなります。
痛風の主な症状は、関節炎による「強い痛み」「赤み・腫れ」です。
痛風による関節炎のほとんどは、足の親指の付け根に起こりますが、足首・足の甲・かかとのほか、稀に手や耳(上半分)にも起こることがあります。
なお、痛風で引き起こされる関節炎は、次のように分類されます。
私たちは身体を動かすためのエネルギー源として、体内で「プリン体」という物質を常に産生しています。プリン体と言うと「ビールに多く含まれる悪者」といったイメージを抱かれる方が多いかもしれませんが、実は肉・魚・穀物・野菜にも含まれている「うまみの元」です。美味しいものには多く含まれ、特にレバー類・煮干し・干ししいたけなどの一見ヘルシーそうに見える食品でもビールの含有量と比べて、はるかに高い量が含まれています。
これらプリン体は肝臓で「尿酸」という老廃物に分解され、血中に一定量存在しています。抗酸化物質としても働いており、不要分は尿・便として排泄されます。
体内の尿酸の量が増えると、血中に溶け切らない過剰な尿酸が結晶化(尿酸塩結晶)して、関節に沈着するようになります。運動などによって関節から尿酸塩の結晶が剥がれ落ちると、白血球が敵とみなして攻撃をするため、炎症が起こり、強烈な痛みが現れます。
痛みが出ている痛風発作中や直後は、血液検査をしても尿酸値が低下することがあり、正しい尿酸値が測れません。そのため、通常、症状が落ち着いた別日に改めて検査を行います。
また、必要に応じて、様々な検査を組み合わせ、痛風の状態・合併症の有無などを調べます。
自覚症状(関節の痛み・腫れ)、既往症、飲酒・運動などの生活習慣、家族歴(家族に痛風の方はいるか?)、服用中の薬などを詳しくお伺いします。
採血で「尿酸値」を測定します。また、高尿酸血症・痛風の方は、高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を合併しているケースが多いため、肝機能・コレステロール・血糖値なども一緒に調べます。
尿のpH値を調べます。体内の尿酸が増えると、尿は酸性になります。
関節内にある関節液を針で採取して、顕微鏡で尿酸塩の結晶の有無を調べます。
尿酸塩の結晶は細長い針のような形をしています。
このほか、超音波検査(エコー検査)、CT検査、病型分類のための尿酸クリアランス検査・クレアチニン測定などを行う場合があります。
※必要に応じて、さいたま赤十字病院など基幹病院をご紹介します。
当院は治療ガイドライン*2に準拠して判断しています。関節液検査で尿酸塩結晶が確認される、痛風結節を認める場合に診断確定となりますが、問診・視診など医師の診察、画像検査、高尿酸血症の持続といったことから、総合的に診断することもあります。
*2(参考)高尿酸血症・痛風治療ガイドライン ダイジェスト版|日本痛風・核酸代謝学会
https://www.tufu.or.jp/pdf/guideline_digest.pdf
痛風治療では、生活習慣の見直しや薬物治療によって、尿酸値を適正にコントロールすることを目的としています。コントロールにより、痛風発作の再発や腎臓病・心血管疾患・尿路結石など合併症の発症リスクを下げることが期待できます。
また、当院では痛風・高尿酸血症の管理基準である「6-7-8ルール」を意識して、尿酸値をコントロールしていきます。
【6-7-8ルール】
痛風は生活習慣病であり、治療の基本となるのが、食事療法・運動療法などによる「生活習慣の改善」です。高尿酸血症の方では肥満傾向のある方が多いため、特に「肥満解消」が効果的です。
薬物治療では、「痛風発作の治療」「尿酸値を下げる治療」の2つがあります。
なお、お薬の副作用や服用方法など気になる点がある場合には、自己判断で中止せず、医師またはスタッフまでお気軽ご相談ください。
痛風発作後、半年~2年程度で再発する方が多いです。痛みが治まっても、継続的に尿酸値を下げて、お薬で尿酸塩の結晶を溶かしきらない限り、再発する可能性があります。痛みが治まったからと安心せず、その後も継続して内服を続けることが大切です。
痛風は生活習慣病なので、発症背景にある生活習慣の乱れを見直すことが何より大切です。腹八分目を心がけて適正体重を保つ、プリン体の多い食品・アルコール類の過剰摂取を避ける、水分をよく摂る(甘い飲み物・アルコール以外で1日2Lを目安)、適度にストレスを発散する、週3回程度の軽い有酸素運動(ウォーキング・ジョギングなど)を行うと良いでしょう。
痛風は古来より知られた病気で、かの神聖ローマ帝国皇帝カルロス5世、フランスのルイ14世なども、この痛みに苦しんだとされています。尿酸値が高い状態(高尿酸血症)は、痛風だけでなく、腎臓・心血管疾患・尿路結石といった合併症、他の生活習慣病など様々な病気のリスクに繋がります。高尿酸血症には症状がないため、健康診断・人間ドックなどで尿酸値が高いことを指摘されたら、放置せず、一度お気軽にご相談ください。