疾患
disease

胃カメラ検査

「胃カメラ検査」とは「胃内視鏡検査」のことを意味しています。胃カメラ検査では先端にカメラの付いた細いファイバースコープと呼ばれる内視鏡を口または鼻から入れて、のど(咽頭:いんとう)・食道・胃・十二指腸の粘膜の色調・凸凹(でこぼこ)具合などを直接観察します。胃カメラ検査は咽頭および消化器疾患・がんの早期発見に有効な上、異常所見があった場合には、そのまま生検(組織の一部を採取する検査)を行うことが可能です。

当院では「つらくない内視鏡検査」を目指しており、極細ファイバーを使用した鼻からの「経鼻内視鏡検査」や鎮痛剤・鎮静剤を用いた検査も可能です。胃の不調が続いている方、人間ドックなどで胃潰瘍・十二指腸潰瘍・ピロリ菌感染を指摘された方は、お気軽にご相談ください。

胃カメラ検査の受診をおすすめしたい人

こんな様子に心当たりはありませんか?もし、心当たりがある場合には、一度胃カメラ検査を受けましょう。

  • 胃のあたりが痛い・胃がもたれるといった症状が続いている
  • 吐き気・胸やけがする・ゲップが出やすい
  • 喉に違和感がある・詰まっている感じがする
  • 吐いたら黒いものや血が混ざっていた、便が黒っぽい
  • 健康診断・人間ドックなどで消化器異常を指摘された
    例)胃部レントゲン検査(バリウム検査)異常所見、胃がんリスク検査(ABC検査)異常、血清ヘリコバクターピロリ抗体陽性、ペプシノーゲン検査異常など
  • 過去にピロリ菌除菌をしたことがある
  • 30歳以上の方
  • 以前に胃カメラ検査を受けてから2年以上経過している

胃カメラ検査とは?

胃カメラ検査は通称であり、正式には「胃内視鏡検査」あるいは「上部消化管内視鏡検査」と呼びます。
上部消化器官とは咽頭(いんとう)~食道~胃~十二指腸のことで、体外からは形状や色合いなどを確認できません。そのため、上部消化管の異常が疑われる場合には、体内に内視鏡を挿入して詳しく観察する「胃カメラ検査」を行います。

(図)消化管の位置

胃カメラ検査で分かる代表的な病気

胃カメラ検査では、喉・食道・胃・十二指腸に関する病気を確認できます。

胃がん

ピロリ菌の長期感染が主な原因とされ、初期では無症状ですが、進行するとみぞおちの痛み・吐き気・お腹の張りなどの症状が現れます。出血によって、吐血・下血が現れることもあります。がん細胞が粘膜表面近くに留まっている状態「早期がん」、がん細胞が胃壁の筋層よりも深く浸潤した「進行胃がん」、悪性度が高く進行が特別に早い「スキルス胃がん」などに分けられます。胃がんは日本人のがんによる死因の第3位(2021年)となっていますが、早期発見では内視鏡的切除治療が可能であり、約9割で完治が期待できます。

食道がん

日本人の食道がんの多くを占める、飲酒・喫煙が原因の「扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)」、胃酸逆流が原因となる「腺がん」があります。初期は無症状で、進行すると、食べ物がつかえる・飲みにくくなる・声枯れがみられます。早期発見・治療で治癒が期待できる疾患です。

逆流性食道炎

胃酸が食道まで逆流することにより、食道に炎症が起こってただれます。胸やけ・酸っぱいものが上がってくる感じ・ゲップ・喉の違和感などが現れます。
◆逆流性食道炎について、「逆流性食道炎ページ」にて詳しく説明しています。

胃炎

主に強いストレスなどが原因となり、急なみぞおちの痛み・吐き気・嘔吐が現れる「急性胃炎」と、ピロリ菌の長期感染が引き金となり、胃炎が慢性化して、胃もたれ・胃痛・胸やけ・吐き気などが現れる「慢性胃炎」があります。
◆慢性胃炎(萎縮性胃炎)について、萎縮性胃炎ページにて詳しく説明しています。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の粘膜が深くえぐれた状態のことで、みぞおちの痛み・吐き気・胸やけが現れます。悪化して出血すると吐血・下血(黒い便)が起こり、穴が開いて激しい痛みとなります。ピロリ菌感染・痛み止めのお薬が発症要因です。
◆胃潰瘍・十二指腸潰瘍について、「胃潰瘍・十二指腸潰瘍ページ」にて詳しく説明しています。

食道静脈瘤・胃静脈瘤

肝障害が進行して「肝硬変」になると、本来肝臓へ流入すべき血液が、食道や胃の表面を通る血管に流れるようになります。血管が凸凹(でこぼこ)して瘤(こぶ)のようになり脆くなるため、少しの刺激でも出血することがあり、吐血・下血が起こります。瘤が破裂して大量出血すると、死に至る可能性があります。
◆食道静脈瘤について、「食道静脈瘤ページ」にて詳しく説明しています。

胃アニサキス症

アニサキスとは寄生虫の一種でサバ・イカ・サンマ・アジなどの魚介類(主に内臓)に寄生しており、白色で少し太い糸のように見えます。これらの魚介類を生(加熱不十分を含む)で食べることで、人の胃や腸の壁に入り込んで「胃アニサキス症」を引き起こし、急に激しいみぞおちの痛み・吐き気などが現れます。アレルギーの一種と考えられ、一度起こしたことがある方には再発しやすいとされています。胃カメラでアニサキスを確認したら、内視鏡的治療として、アニサキスを取り除きます。

ポリープ(胃底腺ポリープ)

ピロリ菌感染のない胃にみられる「良性のポリープ」です。通常は無症状であり、がん化リスクは極めて少ないとされています。一般的に治療の必要はなく、自然に小さくなって消えることがあります。

ピロリ菌検査・除菌治療

ピロリ菌は約40年前に発見された新しい細菌で、酸を中和できる酵素を持っているため、一度感染すると胃粘膜に住み着く特徴があります。通常、抵抗力の弱い5歳くらいまでに感染して持続すると考えられており、大人になってからの初感染はほぼありません。全人類の約半数は「保菌者」とされており、日本では70歳以上の感染が多くなっています。ピロリ菌に感染しても、基本的に症状はありませんが、長期間炎症が続くことにより胃の不調などの症状が現れます。その後、「慢性胃炎(萎縮性胃炎)」「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」と進行し、「胃がん」を引き起こす可能性が高くなることが分かっています。胃カメラ検査でピロリ菌感染の有無が確認でき、除菌治療を保険適用で行うには「胃カメラ検査」は必須検査となります。 
◆ピロリ菌について、「ピロリ菌ページ」にて詳しく説明しています。

当院の胃カメラ検査の特徴

当院では、毎日胃カメラ検査を行っています。当院で行う胃カメラ検査には、次のような特徴があります。なお、診察を受けていただいた後からの「予約制」です。

経験豊富な医師による胃カメラ検査の実施

当院には、内視鏡専門医や消化器病専門医が複数在籍しています。診察~検査~検査後の説明~フォローまで責任を持って実施しています。

(画像)当院の内視鏡検査の様子

鼻からの内視鏡検査や鎮痛剤・鎮静剤を使用した「つらくない胃カメラ検査」に対応

胃カメラと言うと、「オエッ」とえずいて苦しいイメージがある方も多いことでしょう。このオエッとなってしまう正体は「咽頭反射」というもので、内視鏡が舌の付け根に触れることで起こる反射のため、口からの内視鏡(経口内視鏡)では起こりやすい現象です。
当院では、オリンパス製の約5mmの極細内視鏡を使い、鼻からの胃カメラ検査「経鼻内視鏡検査」を行っています。口からの検査と比べて、鼻からの内視鏡では太さが約半分程度であり、さらに鼻から挿入すると内視鏡が舌の付け根に触れにくいため、吐き気を催さずに検査をお受けいただけます。また、ご希望があれば、鎮静剤や鎮痛剤を使用した内視鏡検査の実施も可能です。(※出血が疑われる場合には、緊急で口からの胃カメラ検査を実施し、必要に応じて止血処置を行います。)

特殊光(NBI)搭載の内視鏡による高精度で正確な診断

当院の胃カメラには、青・緑などの短い波長の光を照射する「NBI(狭帯域光観察)システム*1」が導入されています。短波長の光により、消化器の粘膜表層の血管を浮かび上がらせるので、血管構造をより鮮明に観察でき、通常光では見えづらい「がん」などの小さな病変でも早期に発見しやすくなります。

*1(参考)光デジタルによる画像強調観察技術「NBI (狭帯域光観察)」|オリンパス(株)
https://www.onaka-kenko.com/endoscope-closeup/endoscope-technology/et_10.html

ガイドラインに則った内視鏡の洗浄・消毒による感染予防

当院の内視鏡の洗浄・消毒は、ガイドライン*2で推奨されている高水準消毒薬の過酢酸(≒酢)を使用した洗浄消毒装置にて行っています。患者さんが安心して胃カメラ検査をお受けいただけるよう、感染予防に努めています。

*2(参考)消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド|日本環境感染学会・日本消化器内視鏡技師会
http://www.kankyokansen.org/modules/publication/index.php?content_id=14

当院での胃カメラ検査の流れ

STEP01
問診・診察

みぞおちの痛み・胸やけ・吐血・下血などの自覚症状や生活習慣について、詳しくお伺いします。診察の結果、「胃カメラ検査が必要」と判断された場合には、胃カメラ検査の予約をお取りいただきます。
※血をサラサラにするお薬(抗凝固剤・抗血小板薬)など常服薬がある場合には、事前に医師までお申し出ください。

STEP02
【検査前日】自宅での注意事項

検査前日の注意事項

  • 夕食は軽めに
    食事内容の制限はありませんが、繊維質の多い野菜・果物・海藻、油分の多い食事などは避けた方が良いでしょう。
  • 夜9時以降の飲食は禁止
    夜9時以降は水分摂取のみにしましょう。また、飲酒はできるだけ避けてください。

  • 早めの就寝を心がける
    ゆっくり体を休めてください。

STEP03
【検査当日】ご来院

ご予約時間にご来院ください。
なお、当日朝ご自宅では、食事やコーヒー・ジュースなどを飲まないでください。(お水・お茶のみOKです)
※常服薬については、医師の指示通りに服用してください。

事前準備

  • 胃の中の泡・粘膜を消すお薬(消泡剤)をお飲みいただきます。
  • 鼻の通りをよくするお薬(血管収縮剤)を鼻腔(鼻の中)に噴霧します。
  • 鼻腔へ噴霧するタイプの麻酔をします。
    ※初めての方では、麻酔を塗ったチューブにて挿入することもあります
  • ベルトをきつく締められている方は、少し緩めると楽に検査が受けられます。
STEP04
胃カメラ検査

内視鏡検査室に移動します。検査室では、検査台の上に体の左側を下にして横になります。 ご希望者には、鎮静剤・鎮痛剤を注射します。(少しずつウトウトしてきます)
内視鏡を鼻から挿入しますので、力を抜いてラクにしてください。医師はモニターに映る胃の中の状態などを隅々まで観察します。(検査時間:約5分~10分)

※鼻からの胃カメラ検査では、検査中も医師と会話可能です。必要に応じて、組織採取・ポリープ切除を行います。
胃カメラ検査が終わりましたら、身支度を整えて、少しお待ちください。また、ご気分が悪いなど体調に変化があるときには、すぐに医師・スタッフにお申し出ください。
※鎮静剤を使用した場合には、1時間程度お休みいただきます。

STEP05
検査結果のご説明

本日の胃カメラ検査の結果を医師からご説明します。当院では撮影した画面を見ながら、「生活習慣で気を付けたいこと」なども含め、詳しくお話ししています。
なお、組織検査(生検)を行った場合には、検査結果が出るまで約1週間かかるため、後日のご説明となります。

STEP06
ご精算後、ご帰宅

ご精算後、ご帰宅となります。鎮痛剤・鎮静剤を使用する場合は、車・バイク・自転車などの運転はできませんので、ご注意ください。

(画像)当院の内視鏡検査室

まとめ

「胃カメラ検査はつらい検査」と思われている方や、以前検査をしたときに苦しい思いをされて「もう胃カメラは受けたくない」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、食道・胃・十二指腸は他の検査では詳しく調べることが難しい部位であり、胃カメラ検査でのみ発見できる病気が多数存在しています。特に胃がん・食道がんは早期発見であれば、内視鏡で治療することが可能です。当院では「苦痛の少ない胃カメラ検査」を心がけています。胃の不調でお悩みの方、お気軽にご相談ください。

記事執筆者

しおや消化器内科クリニック 院長 塩屋 雄史

出身大学

獨協医科大学 卒業(平成11年)

職歴・現職

獨協医科大学病院 消化器内科入局
佐野市民病院 内科 医師
獨協医科大学 消化器内科 助手
佐野医師会病院 消化器内科 内科医長
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 医師
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 副部長
しおや消化器内科クリニック 開業(平成26年)

専門医 資格

日本内科学会認定内科医
日本肝臓学会認定肝臓専門医
日本医師会認定産業医