疾患
disease

胆のうポリープは、自覚症状が少なく、健康診断などで発見されることが多い疾患です。90%以上が良性の胆のうポリープと多く、長期間にわたって症状がほとんどみられません。
ほとんどが治療を必要とせず、経過観察で検査をして様子をみます。
しかし、中には胆のう癌に進行するものも存在しており、経過観察の必要があります。

胆のうポリープは悪性だと、除去する必要がありますが、その部分だけを除去するのではなく胆のうを摘出する手術が適応になります。

胆のうポリープとは

胆のうの内側の粘膜が盛り上がって隆起した病変のことをいいます。
ポリープの形は、きのこのような形をした「有茎性ポリープ」となだらかな山のような「無茎性ポリープ」があります。基本的には良性のものが多く、ほとんど問題ありません。
胆のうポリープの約90%程度がコレステロールポリープで、最も多いとされています。
多くは数ミリで、10ミリを超えるものは少なく小さいのですが、その分多くの胆のうポリープができやすいという特徴があります。

しかし、胆のうポリープの中には悪性化して胆のう癌にはなるものがあります。
胆のうポリープは自覚症状が少なく、健康診断などで発見されることも多いですが、見つかった場合には、念のため精密検査を受けることをおすすめしています。

胆のうポリープの種類

コレステロールポリープ

胆汁の中のコレステロールが胆のう粘膜に付着したものが多く、近年食生活が欧米化して脂分の多い食事が好まれて食べられるようになったことから増えていると考えられています。
コレステロールポリープの形状は、細い茎のような桑の実の形をしており、盛り上がっています。
コレステロールポリープは治療を必要としませんが、コレステロールが増えるとできやすいことから、野菜や魚などの栄養素も多く含む、栄養バランスがよい食事をすることが望ましいです。

過形成ポリープ

胆のうポリープの約5%程度が過形成ポリープといわれ、良性のポリープです。
胆のうの内側の粘膜が過剰に増殖してでき、ほとんどが5ミリ未満の小さなポリープになります。

炎症性ポリープ

慢性胆のう炎の方にみられることが多く、粘膜細胞の増殖が原因で起こる良性の胆のうポリープです。

繊維腫性ポリープ

繊維腫性のポリープの多くは良性ですが、一部は癌化することがあります。
10ミリ程度の大きさで、積極的に治療することは少ないですが、経過観察が必要です。

胆のう癌

胆のう癌は悪性で、手術が必要になります。
検査を行っても、ほかの胆のうポリープと見分けにくいため、「なだらかな盛り上がりがある」山のような形をした無茎性ポリープや「時間の経過で大きくなるポリープ」は胆のうがんの可能性が高くなります。
胆のうポリープの大きさが20ミリを超えると、80%以上が胆のう癌と診断されています。

胆のうポリープの症状

胆のうポリープには目立った症状がありません。
そのため、健康診断や人間ドックで超音波エコーの検査をした時に発見されることが多いです。また、ほかの病気の検査した時CT撮影やMRI撮影した時に偶然発見されることもあります。
胆のう結石や胆のう炎を患った時に胆のうポリープができるとお腹に痛みを感じることもあります。

胆のうポリープの検査方法

血液検査

肝臓の機能の異常や腫瘍マーカーを確認します。
ただし、この検査だけで診断するのではなく、ほかの検査も行う補助的な検査になります。

超音波エコー検査

胆のうポリープを見つけるための標準的な検査で、お腹の表面から超音波の機械を当てて、体内の画像を写し出します。
痛みなどもありませんので、どなたでも検査を行うことができます。
ただし、内臓脂肪が多い方は角度によって内部の画像が判断しにくく、超音波エコー検査での診断が難しい場合があります。

まずは、胆のうポリープの疑いがある場合、超音波エコーの機械を使用して、ポリープの大きさや形・数を確認していきます。

ポリープの数が多く、10ミリ以下の場合

悪性腫瘍と診断されることはほとんどなく、良性腫瘍の可能性が高くなります。

8ミリ前後の場合

3か月・6か月ごとに経過観察を行います。8~10ミリ程度の場合には、内視鏡手術や腹腔鏡胆のう摘出手術を行うこともあります。

5ミリ以下の場合

6か月ごとに経過をみて、問題なければ1年ごとの経過観察に移行します。

10ミリ以上ポリープで根元が太いもの

胆のう癌の可能性があり、手術が必要になることが多いです。

ポリープの大きさによる胆のう癌の割合は、10ミリ以下の場合には約5%程度、15ミリ程度で25%程度ですが、16ミリを超えると60%程度と可能性が高まります。
また、20ミリ以上では80%以上の方が胆のう癌と考えられます。

胆のう癌の可能性が考えられる場合には、内視鏡検査やCT撮影をして精密検査を行います。

胆のうポリープの経過観察方法

5ミリ以下

5ミリより小さな胆のうポリープは、一般的に年に1回の経過行います。

6~9ミリ程度

半年を目安に超音波エコーの検査をして、大きさや形が変わっていないか検査します。

10ミリ程度

10ミリ以下の良性の胆のうポリープでも、数年経過すると大きくなる可能性があります。
5年間の経過で全体の3%と割合は高くありませんが、この期間の定期検診は大切です。

大きさが10ミリ以上になると、およそ4分の1が胆のう癌の可能性があるため、この場合には腹腔鏡下摘出手術が検討されます。

胆のうポリープは大きさや形によって検査の内容や治療法が異なります。
一人一人安心して生活ができるよう、サポートさせていただきます。

胆のうポリープの治療

胆のうポリープの治療は、胃や大腸のポリープのようにその部分だけを切除することができません。
胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的の貯めておく役割がありますが、除去しても日常生活に支障をきたすことはないため、悪性の可能性がある時には摘出手術が選択されます。

早期の胆のう癌と良性の大きな胆のうポリープでは、診断が難しい場合があります。
また、検査で胆のう癌と明らかに診断されるまで進行してしまうと、ほかの部位に転移してしまう可能性があります。
そのため、胆のう癌と確定診断をされていない場合でも、胆のう癌の疑いがあると判断された場合には、胆のうを切除します。そして、その胆のうを顕微鏡検査で調べる「診断的治療」という方法がとられます。

腹腔鏡下胆のう摘出手術

胆のう癌まで進行していない可能性がある時には、腹腔鏡下胆のう摘出手術が選択されます。
これは、ほかの部分に転移している可能性が少ないためです。
ただし、ポリープが肝臓の位置に近い場合には、組織をすべて切除します。
また、手術中に癌の転移や浸潤が見られた場合には、開腹手術に切り替える場合もあります。

開腹での胆のう摘出術

胆のう癌の進行が疑われる場合には、開腹で胆のう摘出術を行います。
周りに転移がないか確認して、状況によってはがんの転移が起こりうる周囲のリンパ節を切除して病変を取り切る手術が行われます。

胆のう腺筋腫症

胆のうポリープを検査する時や健康診断などで発見されることが多い、胆のう腺筋腫症があります。
胆のう腺筋腫症は、何らかの原因があって袋状のものが増殖して、胆のうの壁が厚くなります。
この袋状のものはRASと呼ばれ、この中に胆汁が溜まると胆石ができることがあります。
胆のう腺筋腫症で発生するRASはほとんど良性であり、大きさは変わらないことが特徴です。
そのため、ほかの臓器に悪影響を与えたり、胆のう癌に進行したりすることは少ないです。
ただし、RASによって胆のう炎や胆石症の症状がみられることもあります。胆石症の場合には、胆汁の中に過剰なコレステロールがあると染み出して胆石が発生します。
胆石がRASの中にはまると、胆のうが胆汁を出すごとに収縮するため、痛みが出ることもあります。

胆のう腺筋腫症の原因

現状でははっきりした理由は解明されていませんが、胆汁の流れが悪くなり、胆のうの内圧が上がるとRASが発生するといわれています。

胆のう腺筋腫症の症状

胆のう腺筋腫症はほとんど症状が出ずに自覚症状がありません。 そのため、胆のう腺筋腫症で痛みが出て検査をするのではなく、胆石症や胆のう炎を起こしている時のその痛みで腹部に痛みや違和感があることがあります。
胆のう腺筋腫症のうち約15%の方が、胆のうポリープがあり、約5%程度の方が胆石症を合併していると考えられています。

よくある質問

胆のうポリープと診断されました。必ず治療する必要はありますか?

胆のうポリープのおよそ90%は良性のコレステロールポリープで大きさもほとんど変化しないため、この場合は治療をする必要がありません。
一般的なコレステロールポリープといわれた場合には、1年に1度超音波エコー検査を行います。ポリープの大きさや形によって検査の頻度は異なることがありますので、担当医と相談の上、決められた期間で検査を受けてください。
また、「検査で胆のうポリープが大きくなっている」「10ミリ以上の胆のうポリープである」「胆のうポリープの幅が広くなだらか」これらの胆のう癌を疑う所見があった場合には、胆のう摘出術も検討されます。

胆のうポリープは癌になりますか?

胆のうポリープはいくつかに分類されています。
具体的には「コレステロールポリープ」「過形成ポリープ」「炎症性ポリープ」「繊維腫性ポリープ」などがあります。
このほかにも良性の腺腫や早期の胆のう癌も含まれます。

良性の胆のうポリープは治療せず経過観察をしますが、胆のう癌は早期に胆のうを摘出する必要があるため、これらの見極めが大切です。
大きさや形で診断しますが、大きさは10ミリ以上になると精密検査が必要になってきますし、ポリープの形がいびつで数が少ない場合も胆のう癌が疑われます。

胆のう腺筋腫症は必ず治療する必要はありますか?

胆石症や胆のうポリープ(胆のう癌の疑いがある場合)などを合併している場合には治療を検討することがありますが、胆のう腺筋腫症だけで症状がない場合には経過観察をすることが多いです。
痛みの原因と診断された場合や、胆のう癌の可能性がある時には胆のう摘出術が検討されます。

このほかにも良性の腺腫や早期の胆のう癌も含まれます。
良性の胆のうポリープは治療せず経過観察をしますが、胆のう癌は早期に胆のうを摘出する必要があるため、これらの見極めが大切です。
大きさや形で診断しますが、大きさは10ミリ以上になると精密検査が必要になってきますし、ポリープの形がいびつで数が少ない場合も胆のう癌が疑われます。

まとめ

胆のうポリープは自分で気づくことが少なく、健康診断などで発見されることが多い疾患です。
多くは良性で症状が少ないですが、中には胆のう癌の可能性があるものもあります。
定期的に経過観察をして胆のうポリープの形や大きさが変わっていないか確認しましょう。

記事執筆者

しおや消化器内科クリニック 院長 塩屋 雄史

出身大学

獨協医科大学 卒業(平成11年)

職歴・現職

獨協医科大学病院 消化器内科入局
佐野市民病院 内科 医師
獨協医科大学 消化器内科 助手
佐野医師会病院 消化器内科 内科医長
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 医師
さいたま赤十字病院 第1消化器内科 副部長
しおや消化器内科クリニック 開業(平成26年)

専門医 資格

日本内科学会認定内科医
日本肝臓学会認定肝臓専門医
日本医師会認定産業医