脂肪肝の指標で大事なのは、「AST(GOT)・ALT(GPT)」です。非アルコール性ではASTと比べてALTが上昇し、中性脂肪・コレステロール値も高くなる傾向があります。一方アルコール性脂肪肝ではASTの方が高くなり、γ-GTPも上昇します。
脂肪肝(NAFLD、NASH、ASH)とは、肝臓に脂肪が多く溜まった「脂肪性肝障害」のことです。脂肪肝にはお酒の飲みすぎによる「アルコール性脂肪肝」と、お酒とは関係なく過食など生活習慣病に合併しやすい「非アルコール性脂肪肝」があります。脂肪肝になっても自覚症状はないため、健康診断・人間ドック・他の部位の検査で指摘されて初めて気づくケースがほとんどです。また、こうした「非アルコール性脂肪肝」が近年急増する一方で、「無症状だから」と治療せずに放置される方が多く、問題となっています。
脂肪肝の中には、肝炎を発症して最終的には肝硬変・肝不全・肝がんに進行するケースもあるため、「生活習慣の見直し」「薬物療法」など適切な治療を行い、肝臓の状態を改善させることが大切です。「脂肪肝」を指摘されたら、一度お気軽にご来院ください。
肝臓は胃の右隣(お腹の右上あたり)にあります。肝臓には神経がないので、病気がある程度進行しないと自覚症状が現れない特徴があり、そのため「沈黙の臓器」と呼ばれています。
肝臓の主な役割は、摂取した栄養素を体に必要な成分に換える「代謝」、アルコール・ニコチン(たばこ)・アンモニアなど有害物質の「解毒・排泄」、腸の消化・吸収に必要な消化液「胆汁の合成・分泌」といった生命維持に欠かせない機能です。さらに、高い再生力や予備能力もあります。
肝臓は障害を受けると、炎症が起こって肝細胞が壊されていく「肝炎」となり、肝炎状態が続くと障害を受けた細胞分を埋めるために繊維化が起こって肝臓が硬くなる「肝硬変」、肝細胞の炎症・再生を繰り返す過程で遺伝子の突然変異が起こるとされる「肝がん」へと進行していきます。脂肪肝の時点では肝細胞の破壊は起こっていませんが、肝炎の前段階として「肝臓病の入り口」の病態と言えるでしょう。
(図)肝障害の過程
脂肪肝とは脂肪(中性脂肪)が溜まった肝臓の状態で、「脂肪性肝障害」とも呼ばれます。
肝臓には、エネルギー源として脂肪を作って、肝細胞内に溜める働きがありますが、使用するエネルギーと比べて作られる量が多いと脂肪が溜まるため、脂肪肝となります。
ガイドライン*1の中で、肝細胞の5%以上に脂肪化が認められる肝臓を「脂肪肝」としています。
*1(参考)脂肪肝の超音波診断基準 P.3|日本超音波医学会
https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/fatty_liver.pdf
また、脂肪肝は、原因から次の2種類に分けられます。
(図)脂肪肝の分類
アルコールの代謝効率には個人差がありますが、一般的に毎日ビールを750ml(大瓶1本強)、日本酒なら1合半、グラスワイン2杯半、ウイスキーではダブルで1杯半相当のお酒を飲み続けることで、アルコール性脂肪肝を発症しやすくなります。
【症状】自覚症状なし
【原因】お酒の飲みすぎ
※1日あたり純エタノール量で男性30g以上、女性なら20g以上(男性量の2/3程度)
アルコールの過剰摂取を長期的に続けると「ASH」になります。アルコールの過剰摂取とは、1日の平均飲酒量が約60g以上(ビール中瓶3本・日本酒3合弱・ウイスキーダブル3杯・25度焼酎300ml)とされています。
※女性・ALDH2活性欠損者(遺伝的にアルコール代謝効率が悪い人)では、1日40g程度の飲酒でもアルコール性肝障害を起こす場合があります。
【症状】初期は症状なし。進行すると黄疸・肝臓の腫れ・倦怠感・腹部の不快感・かゆみなど
【原因】長期的な過剰飲酒
あまりお酒を飲まなくても発症するタイプの脂肪肝であり、近年の肝障害の中でダントツに多い病気です。「非アルコール性」とはいえ、全く飲まない方だけでなく、1日あたりの飲酒量が男性:30g未満、女性20g未満の飲酒をされている方も含まれます。生活習慣病と合併しやすく、健康診断などにおけるNAFLD有病率は男性で約40%、女性で約20%と報告され、全国に1,000万人以上の患者さんがいると考えられています。男性では30~50代、女性だと40代後半から増加します。肥満・生活習慣病の治療によって、病状が改善する特徴があります。
【症状】ほとんどない
【原因】お酒以外の肥満・生活習慣病(糖尿病・脂質異常症・高血圧)、ストレスなど
非アルコール性脂肪肝のうち、肝炎が持続して少しずつ繊維化が進行していくタイプを「NASH」と呼びます。近年分かってきた新しい概念で、推定患者数は約100~200万人とされています(※調査が始まって時間が浅いので、今後の研究によって増減する可能性あり)。NASHの約50%は進行性で、約10年で20~30%が肝硬変・肝がんに進行しますので、肝硬変へ進行する前に適切に治療を行う必要のある病気です。
【症状】初期は症状なし。進行すると倦怠感・腹部の不快感・皮膚のかゆみ・黄疸など
【原因】お酒以外の肥満・生活習慣病(糖尿病・脂質異常症・高血圧)、ストレスなど
健康診断・かかりつけ医から「脂肪肝」の疑いを指摘されたら、念のため、当院のような肝臓専門医のいる医療機関にて、詳しい検査を受けることをおすすめします。
また、NAFLD・NASH・ASHの診断後も定期的に検査を受けて、経過観察をしていくことが大切です。
ほかにも、腹部CT検査・腹部MRI検査(MRCP検査)、超音波エラストグラフィー検査(腫瘤の硬さ・肝臓の繊維化の判別可能)で肝臓の状態を確認することがあります。
また、血液検査・超音波検査などの検査結果から「NASHの可能性が高い」「病状が進行している」と判断される場合には、肝臓の一部の組織を採取して顕微鏡で調べる「肝生検」を行います。なお、肝生検は検査後の安静も必要なので、通常は検査入院となります。
※必要に応じて、さいたま赤十字病院など基幹病院をご紹介します。
当院ではガイドラインに則り、他の肝障害を除外しながら、様々な検査を行い、総合的に判断しています。
脂肪肝・脂肪肝炎(NAFLD、NASH、ASH)の治療では、メタボリックシンドロームを抑えながら、肝硬変に進行させないことが重要となります。
脂肪肝・肝炎の治療の中心となるのが、「生活習慣の見直し」です。 アルコール性であれば、「禁酒・節酒」が効果的です。ASHで肝臓が腫れていても、禁酒により顕著に縮小するケースがよくあります。 一方、非アルコール性では「減量」が必要です。減量の程度に応じた肝組織の改善が認められており、特に肥満のあるNASHの方では体重の7%を目標として減量に取り組み標準体重を目指しましょう。低カロリー・栄養バランスの良い食事・適度な有酸素運動・良質な睡眠など生活習慣を見直して、背景にある生活習慣病せることが重要です。 当院は、パーソナルジムASUOTREと提携しております。ここでは肝障害の原因で多い脂肪肝をはじめとする、いわゆる生活習慣病の方をメインに「運動の習慣化」をさせることにより、健康に戻していくトレーニングを医師、看護師、管理栄養士と共に行っております。是非ご利用ください。
↓ASUTORE↓
禁酒や減量などの生活習慣の改善をしても効果が不十分だった場合には、薬物療法を検討します。
一般的に糖尿病・脂質異常症・高血圧などがある方では、基礎疾患に対する薬物療法を行います。抗酸化作用のあるビタミンE投与が有効とする研究結果も報告されていますが、今のところ、日本ではNAFLD・NASH単独での保険適用はありません。
脂肪肝の指標で大事なのは、「AST(GOT)・ALT(GPT)」です。非アルコール性ではASTと比べてALTが上昇し、中性脂肪・コレステロール値も高くなる傾向があります。一方アルコール性脂肪肝ではASTの方が高くなり、γ-GTPも上昇します。
生活習慣を見直して、「メタボリックシンドローム」を回避しましょう。
脂肪肝は自覚症状がないため、指摘されても放置してしまいがちです。しかし、原因がお酒に限らず、生活習慣病・肥満などの脂肪肝(NAFLD)でも、慢性肝炎(NASH)となり、肝硬変・肝がんまで進行するケースがあることが分かってきました。脂肪肝は生活習慣病を合併しやすいですが、「生活習慣の見直し」で肝機能の改善は可能です。当院では「脂肪肝外来」を設けて、薬物治療のみならず、食事・運動療法のフォロー、経過観察にもしっかり対応しております。脂肪肝の異常を指摘された方は、一度お気軽に当院までご相談ください。