便の状態を表す世界的な基準に「ブリストル便形状スケール」があります。
①~②は便秘、⑥~⑦は下痢で、③~⑤が良い便とされており、中でも理想的な便は「④バナナ便」です。日頃からご自身の便の状態をよく確認しておくと、良いでしょう。
(図)ブリストル便形状スケール
下痢(げり)とは「水分量が多く、液状またはそれに近い便が何度も排出される状態」であり、便秘(べんぴ)とは「いつもよりスッキリ便が出ない・出にくい状態」のことです。
「下痢・便秘」と言うと、「よくある症状」として軽視されがちですが、原因は様々あります。ストレス・食べ過ぎ・飲み過ぎなどの「生活の乱れ」によって一時的に起こることがある一方で、重篤な腸の病気や甲状腺の病気といった内科疾患が隠れているケース、放置により症状が悪化するケースもあります。また、症状の長期化で外出に不安を覚え、抑うつ状態など二次疾患を引き起こすことがあります。
下痢・便秘によって日常生活に支障を来しているようであれば、きちんとした治療が必要です。「たかが下痢」「たかが便秘」と思わずに、早めに対処しましょう。
私たちは食べた物を消化・吸収するために毎日約7Lもの消化液を分泌しており、これに飲み物や食べ物の中に含まれる水分など口から摂取する水分約2Lを合わせると、一日あたり約9Lの水分が腸に入ってきます。しかし、消化管(胃・小腸・大腸)での消化・分解により、水分の約99%は吸収されてしまうので、適度な硬さの便には1%程度の水分しか含まれていません。そのため、何らかの理由で腸内の水分バランスが少しでも崩れると、「下痢」になります。
次のような下痢の場合には、早急な治療を必要とする可能性が高いため、すみやかに医療機関を受診しましょう。
※高齢者、心臓病・糖尿病・腎臓病などの持病がある方は、以下に当てはまらなくても、早めに受診しましょう。
下痢には急に発症し2週間以内に改善する「急性下痢」と、4週間以上続く「慢性下痢」があります。また、発症のメカニズムから4つのタイプに分けられます。
一過性で軽症の急性下痢であれば、問診・腹部の視診・触診のみで、薬を処方することがあります。下痢を引き起こす原因には様々あるため、症状・診断に合わせて、必要な検査を行います。
下痢の治療法は、原因によって異なります。
一般的に、急性下痢の主な原因は「生活習慣の乱れ」なので、過度なアルコール・脂っこい食事の摂取や暴飲暴食を控えて、おかゆ・すりおろしリンゴ・鶏ささみ・白身魚など消化の良いものを食べて胃腸を休めましょう。下痢が続くと「脱水症状」を引き起こすことがあるため、冷たくないカフェインの入っていない飲み物(白湯・麦茶など)を少しずつ小まめに飲むようにしましょう。感染性胃腸炎では水分補給と安静を行いながら、症状に応じてお薬による対症療法を行います。なお、症状が重い場合には、薬物療法や外来での点滴を行い、症状の改善を図ります。一方、慢性下痢では原因に合わせたお薬を使い、症状の緩和を図ります。
便秘には様々な定義がありますが、日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義しています。スムーズに排便できない、排便がないことにより腹痛・膨満感(お腹が張って苦しい感じ)を伴う、下痢・便秘を繰り返すなど日常生活に支障を来しているのであれば、治療が必要な「便秘症」です。便秘症が1~2か月以上続くことを「慢性便秘症」としています。
また、便秘は放置することでさらに状態が悪化する「悪循環病」なので、便秘でお困りのことがありましたら、早めにご相談ください。
次のような便秘では、すみやかに医療機関を受診しましょう。
便秘の原因には様々ありますが、大きく4つに分けられます。
便秘の検査では、腸閉塞や大腸がんなど器質的異常の有無を確認することが重要となります。
問診
問診から大まかな原因の見当を付けるため、とても重要です。
排便や便の状態(回数・形など)、他の症状があるか、服薬歴(サプリメントを含む)、持病のほか、ストレス・食生活といった生活習慣についても詳しくお伺いします。
腹部の視診・触診
身体診察を行い、病気の兆候がないか、全身を観察します。 必要に応じて、血液検査、超音波検査(エコー検査)、レントゲン検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)、直腸診を行います。なお、当院の大腸内視鏡検査は、鎮静剤を使用した「寝たままで無痛」の検査を目指しています。
※詳しくは、当院の「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」のページで説明していますので、ご覧ください。
便秘治療には、生活習慣・食事を見直した「便秘になりやすい環境の改善」と、お薬などで「スムーズに排便できるようにする」の2つの側面からのアプローチが大切となります。
便の状態を表す世界的な基準に「ブリストル便形状スケール」があります。
①~②は便秘、⑥~⑦は下痢で、③~⑤が良い便とされており、中でも理想的な便は「④バナナ便」です。日頃からご自身の便の状態をよく確認しておくと、良いでしょう。
(図)ブリストル便形状スケール
下痢のときは、腸の活動が異常になっているので、少しの間「休める」ことが大切です。お腹を温め、ゆっくり安静にしましょう。また、下痢が続くと、脱水症状になりやすいので、十分な水分補給に努めてください。また、感染性胃腸炎では、他人にうつす可能性があるので、こまめな手洗いも忘れずに行ってください。
一方、便秘のときは腸の動きを促す「のの字マッサージ」がおすすめです。
大腸の動きに合わせて、お腹の右下~右上~おへその上~お腹の左上~左下と、お腹の右下を起点に時計回りにもみほぐしていきます。朝・夕に20回ずつ行うと良いでしょう。
便は「健康のバロメーター」とも呼ばれます。一過性の軽い下痢・便秘はどなたも経験があるでしょう。しかし、下痢・便秘の中には、重大な病気が原因となっていることがあります。その上、脳と腸は互いに影響し合う「腸脳相関」の関係が成り立っているため、下痢や便秘が続くと強いストレスとなって外出したくない/外出できなくなるなど、著しいQOL(生活の質)の低下に繋がります。
当院では、患者さんの排便状態・お腹の様子をしっかり診察した上で、原因に合わせ適切な検査・治療を進めていきます。下痢や便秘でお困りの方、一度ご相談ください。