肝細胞がんは再発しやすい特徴があります。根治治療である肝切除を行っても、5年後の再発率は約80%にのぼると報告されており、肝切除後の再発のうち、約90%は肝臓内での再発です。肝細胞がんの早期発見・早期治療に繋げるために、通常3か月おきに腫瘍マーカーなどの血液検査・超音波検査を行い、6か月おきにCT検査などの画像検査を行うことが推奨されています。また、肝機能を維持して再発を抑えるために、肝庇護療法(肝機能を正常化させる目的の治療)や肝炎ウイルスの感染があれば「抗ウイルス療法」を行います。
肝細胞がんは、肝臓の細胞から発生した「がん」であり、一般的に「肝がん(肝臓がん)」とは「肝細胞がん」のことを意味します。
「肝臓は沈黙の臓器」という異名がある通り、肝細胞がんになっても、病状が進行するまでは自覚症状のない場合がほとんどです。そのため、健康診断・人間ドックや他の病気のための超音波検査(エコー検査)などで発見されることも少なくありません。
肝細胞がんの発症の背景には「慢性肝炎・肝硬変(かんこうへん)」があります。肝細胞の破壊・再生が繰り返される過程で、遺伝子の突然変異が起こることがあり、「がん化」します。
当院では、慢性肝炎を含む様々な肝障害に対して丁寧な診療を心がけ、「肝細胞がん」の早期発見を目指し、適切な治療に繋げられるよう努めています。また、肝細胞がんの治療後の定期的なフォローアップも行っています。
肝臓に関して、気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
肝臓にできる「がん」には、大きく分けて2種類があります。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」*1によると、2019年の肝がんの新規患者数は約3.7万人(男性:25,339人、女性:11,957人)で、女性と比べて、男性の発症が約2倍と報告されています。また、男性では40代後半から80代での発症が多く、男性の罹患が多い「がん」の部位としては、前立腺、大腸、胃、肺に次いで、肝臓は5番目です。
*1(参考)がん登録・統計|国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
肝細胞がんの発症の背景には「慢性肝炎」の存在があります。肝臓は再生力が高いため、炎症などにより肝細胞がある程度破壊されても、再生可能です。しかし、慢性肝炎により長期的に肝細胞の破壊と再生が繰り返されると、再生が間に合わず、次第に肝臓が硬くなる「肝硬変」を発症します。その過程で遺伝子の突然変異が積み重なり、「肝細胞がん」が発生します。
なお、慢性肝炎の要因の約90%は「ウイルス性肝炎」であり、特に「C型肝炎」からの発生がこれまで大多数を占めていました。しかし、近年では抗ウイルス治療の普及や医療環境の整備・向上によって新規感染が減少していることから、同様にウイルス性肝炎からの肝細胞がんの発生も減少傾向にあります。一方で、生活習慣病に合併しやすい「非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)」を原因とする肝細胞がんが増加しています。
そのほかの要因には、過剰なアルコール摂取、喫煙、肥満、糖尿病などがあります。
◆ウイルス性肝炎や非アルコール性脂肪性肝障害は、それぞれ「ウイルス性肝炎ページ」「脂肪肝ページ」にて詳しく説明しています。
「肝細胞がん」の初期では自覚症状がないケースが多く、病状が進まないと症状は現れません。しかし、肝細胞がん患者さんの多くは、がん以外にも慢性肝疾患を抱えているため、慢性肝炎や肝硬変に伴う症状がみられます。
疲れやすい・全身倦怠感、食欲不振、進行すると黄疸(おうだん:皮膚・白目が黄色くなる)、腹水・むくみ(お腹・手足に水が溜まる)など
なお、肝細胞がんが進行すると、腹部のしこり・圧迫感・痛みなどの症状が現れてきます。
肝細胞がんの診断は、超音波(エコー)検査やCT検査・MRI検査などの「画像検査」と腫瘍マーカー検査などの「血液検査」を組み合わせて行います。画像検査で腫瘍の「良性/悪性」が判別できないケースなどについては、針で組織を採取し顕微鏡で調べる「生検」を行うことがあります。
また、治療方針を決めるために、血液検査で肝機能を調べたり、内視鏡で静脈瘤の有無や肝硬変の程度を確認したりする場合もあります。
そのほか、磁気を使い、X線被ばくがない「MRI検査」にて確認する場合があります。
※MRI検査が必要な場合には、さいたま赤十字病院など基幹病院をご紹介します。
肝細胞がんの治療法は、がんの進行の程度「病期(ステージ)」や肝機能の状況(肝予備能:残された肝機能がどの程度かを表す指標)から検討します。
※当院では、主に肝細胞がん治療後の経過観察・定期的な検査などのフォローアップを行っています。必要に応じて、さいたま赤十字病院など基幹病院をご紹介し、スムーズに治療が進められるよう努めています。
病期は、主に「がん」の大きさ・個数、肝臓内の血管への広がり、ほかの臓器まで転移しているかなどによって、Ⅰ期~Ⅳ期までの4つに分類され、数字が大きいほど「がん」が進行していることを意味します。
分類法にはいくつかあり、日本の「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約(日本肝癌研究会編)」もしくは国際的評価の「TNM悪性腫瘍の分類(UICC)」がよく用いられます。ただし、分類法によって、同じステージでも内容が異なる部分もあるため、注意が必要です。
肝細胞がんには複数の治療法があり、いずれの治療においても全身状態を良好に保つことが大切となります。その中心となるのが、「外科的手術」「穿刺局所療法(せんしきょくしょりょうほう)」「肝動脈カテーテル療法」の3つです。
手術で切除できないが、肝予備能が保たれている進行性の肝細胞がんが対象となります。現在は、進行肝細胞がんの初回治療として、免疫療法と分子標的薬の併用療法が使用されています。
「がん」がある場所のみ、ピンポイントで高線量の放射線を照射する治療法で、主に転移するなどして症状がある場合の緩和的治療を目的に行われます。
肝細胞がんは再発しやすい特徴があります。根治治療である肝切除を行っても、5年後の再発率は約80%にのぼると報告されており、肝切除後の再発のうち、約90%は肝臓内での再発です。肝細胞がんの早期発見・早期治療に繋げるために、通常3か月おきに腫瘍マーカーなどの血液検査・超音波検査を行い、6か月おきにCT検査などの画像検査を行うことが推奨されています。また、肝機能を維持して再発を抑えるために、肝庇護療法(肝機能を正常化させる目的の治療)や肝炎ウイルスの感染があれば「抗ウイルス療法」を行います。
注意点は患者さんの体調・肝機能の状態によりますが、大切なのは「肝機能をできるだけ維持すること」です。規則正しい生活を心がけ、次のような点に注意すると、良いでしょう。
肝細胞がんは、慢性肝炎や肝硬変による肝臓の破壊・再生過程で発生します。治療においては、いくつか選択肢がありますが、どの治療法においても全身状態を良好に保つことが重要です。適切な治療によって、肝細胞がんは根治が期待できる一方で、再発しやすい側面もあります。がんの早期発見・早期治療に繋げるためには、日頃から定期的な検査や経過観察が大切となります。
当院では、従来装置と比べて、被ばく線量を約25%抑えられるCT装置の導入ならびに、院長をはじめとする肝臓専門医が複数在籍しているので、様々な肝疾患に対し、丁寧な診療を行っています。肝臓に関して、気になることがある方はお気軽にご相談ください。